HEAT20が注目される理由とは?
2025年05月11日
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HEAT20が注目される理由とは?
家を建てるとき、重視したいのが「省エネ性能」。環境に優しく、家計にもやさしい省エネ住宅は、今やスタンダードになりつつあります。中でも注目されているのが「HEAT20」という断熱基準です。この記事では、省エネ基準の基本からHEAT20の特徴、他の基準との違いまでを解説します。
HEAT20とは?
HEAT20は、「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称です。研究者や住宅・建材メーカーの有志によって2009年に発足し、2020年に一般社団法人となりました。 HEAT20では、日本を8つの地域に区分し、それぞれの気候に適した断熱性能(UA値)の目安をグレード別に定めています。他の省エネ基準に比べてより厳しい数値設定が特徴です。
HEAT20の目的
◼️地球温暖化・エネルギー問題に対応した住まいの提案
◼️健康で快適な暮らしを実現するための技術開発と普及
◼️断熱を中心とした住宅性能の評価と啓発
3つの基本要素
HEAT20は、以下3つの要素のバランスが取れた住まいを理想としています。
1.建築的要素:断熱、遮熱、通風、日射取得など
2.設備的要素:空調や換気などの高効率な設備
3.創エネ的要素:太陽光発電などによるエネルギー創出
なぜHEAT20が注目されているのか?
脱炭素化への取り組み
日本は2050年のカーボンニュートラル達成を目指しています。住宅からのCO₂排出量削減はその中でも重要な課題。断熱性能の向上は、省エネ住宅実現のカギとなります。
海外との比較
たとえば、日本の「H28省エネ基準」による地域5~8のUA値は0.87。一方、アメリカは0.43、ドイツは0.40といった水準です。日本の断熱性能は国際的に見るとまだ低く、今後の改善が求められています。
断熱性能とは?
住宅における「断熱」とは、屋根・壁・窓などを通じて熱の出入りを抑えること。外の暑さや寒さの影響を減らし、エネルギー効率を高める役割を果たします。
外皮性能とUA値
◼️外皮性能:屋根・壁・窓・床など建物の外と中を隔てる部分の断熱力
◼️UA値(W/㎡・K):外皮から逃げる熱の量を示す数値。小さいほど断熱性能が高い
HEAT20の「地域区分」と「グレード」
地域区分(全8区分)
日本全国を気候条件に応じて8つの地域に分類し、それぞれに最適なUA値を設定しています。
地域区分
主な地域
1地域
佐呂間町など
2地域
札幌市・旭川市など
3地域
盛岡市・青森市など
4地域
秋田市・山形市など
5地域
つくば市・仙台市など
6地域
東京・大阪など
7地域
鹿児島市・高知市など
8地域
沖縄
グレード(G1・G2・G3)
冬の室内体感温度をもとに評価されます。
◼️G1:1・2地域で概ね13℃、3~7地域で概ね10℃を下回らない
◼️G2:1・2地域で概ね15℃、3~7地域で概ね13℃を下回らない
◼️G3:全地域で概ね15℃を下回らない(2019年に新設)
HEAT20住宅のメリット
快適性の向上:暖房していない部屋やトイレなども冷えにくく、家中どこでも温度差が少ない快適な暮らしを実現します。
健康への配慮:結露やカビを抑えることで、アレルギーや喘息などの健康リスクを軽減。ヒートショック予防にもつながります。
光熱費の節約:冷暖房効率が良いため、光熱費を年間数万円単位で削減できることもあります。
他の断熱基準との違い
ZEH(ゼッチ)
◼️定義:使うエネルギーと作るエネルギーがほぼ同じ「ゼロエネルギー住宅」
◼️評価基準:
1.UA値:0.4~0.6以下
2.一次エネルギー消費量:20%以上削減
3.創エネ設備の導入
H28省エネ基準
◼️現行の最低基準として、外皮性能と一次エネルギー消費量の2点で評価
◼️2016年に改正され、住宅性能の底上げを目指している
UA値の比較(参考表)
基準
UA値の目安(地域によって変動)
HEAT20 G1~G3で最も厳しい水準
ZEH 0.4~0.6
H28基準
約0.87(地域5~8の場合)
まとめ
省エネ住宅を検討するとき、基準や用語の違いに迷う方も多いはず。中でもHEAT20は、断熱性能に特化した厳しい基準で、快適性・健康面・経済性のバランスに優れた住宅を実現できます。
これから家づくりを検討される方にとって、快適で安心できる住まいをつくるためのヒントとなれば幸いです。
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